〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

誰がどうリーダーシップを発揮すべきか?

前回、リーダーシップについて考えてみた。
その1:正しい方向を示すこと」
その2:正しい方向をメンバーに納得させること」
その3:正しい方向に向かわせる『力』を持っていること」
その4たどり着いた正しい方向が『正しい』と証明できること。『正しかった』という結果を明確にメンバーに納得させ、さらに、その利益をメンバーに分け与えること」

↓↓↓こちらの記事です。

tavigayninh.hatenadiary.jp

 

前回触れてなかったのが、その「リーダーシップ」を誰がどう発揮すべきか、という点。

ぼくなんかは、任天堂の岩田社長にそう教わったのだが、その時々にリーダーシップを発揮するのが一番合理的な人がリーダーシップを発揮すればいい、そう考えていたし、今でもそう思っているのだが、組織というのは人間社会なのです。そうは簡単にはいかない。

 

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以前、こんな経験をしたことがある*1

ある改善チームを社内の若手で編成して、会社の問題点を若手の目から洗い出して、経営層に報告するというプロジェクトがあった。そこでリーダーシップを発揮していたのが、入社8年目のA-君だった。

ぼくは直接はそのプロジェクトには関与していなかったのだけれども、部門長へのヒアリングで話を聞きに来るので、プロジェクトチームとよく議論をしたものでした。実際、A-君の「兄貴」ぶりはたいしたもので、チームをどんどん引っ張っていた。ぼくは(それに他の部門長も)「がんばってるな...!」と評価していたんだけれど......

経営陣の重要な一人、X-さん、は A-君のやり方を全く評価していなかったことが、プロジェクトの終了後にわかったのですね。プロジェクトチームからの報告はそれなりのものだったし、指摘された問題点のうちのいくつかは実際に改善の対象にはなっていた。X-さんもニコニコして報告を聞いていたので、A-君を評価していないと、ある飲み会のときにボソっとつぶやいたのにはびっくりしたのです。

「自分のやり方を主張しすぎる。改善点の指摘も強引だ。あれじゃ皆は納得しない」

...... いや、納得してたから、いくつか実行にうつされたんでしょ?

「ともかく俺は A- を評価しない。来期にはもっと別の部署に異動してもらう」

え! 異動までさせちゃうの? と驚いたのだが、それ以上はきな臭い話になりそうだったので、話題を変えました。

あとで、ちょいちょいと情報を集めてみると、A- 君のリーダーシップを「強引だ!」と陰で反対していたメンバーが一人いて(一人だけ、だったのかも、「Y- さん」としよう)、「A- のやり方で改善点を作ると、言われた部門は皆怒っちゃいますよ」とX-さんに対してないしょで吹き込み続けていたらしい。チームで何が話されているのか、決まりつつあるのかを、逐一批判的に陰で直接 X-さんにメールし続けていたのだ。
(登場人物の関係図式。性別はいろいろですよ。)

   

別にA- 君とY- さんとは、ぼくが知る限りライバル関係とか、嫌いあってたということもなかったのですけどね*2

Y- さんは本当に心配していたのかもしれない。ないしょで、X-さんに「告げ口」するのはぼくとしては不愉快な行為だけれど、Y- さん としてはやむにやまれず、会社のためを思っての「ご注進」だったのかもしれない。

ぼくが X-さん だったら、「卑怯な告げ口はやめてチームの中で話し合いなさい」と言ってたところだが、X-さんはそういう「ご注進」は隠れた本当の情報であると評価していたのだろう。もしかしたら、X-さんは Y-さんをスパイとして利用していたのかもしれない。自分が関係する部門に対する批判(改善提案)がチームから提案されないようにと。それは今ではわからない。

とはいえ、この事例は、若手による小さなチームの小さなプロジェクトでの話です。誰が決めて指示をするか、リーダーシップの話については、もっとドロドロしたパワーゲームがらみ、嫉妬や保身がらみのものは、たくさんあるし、ちょっとはそんな醜く汚いものも経験してきた気がする。

リーダーシップを、無菌室の中で考えるのとは違って、実際の組織、人間関係の中で上手に発揮するのは難しいのですね、ホント。

 

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次回は、マネジャーによる意思表示の仕方についての予定です。つまり、指示の出し方についてです。

  

© 朽木鴻次郎
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kuchiki-office.hatenablog.com

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*1:N社のことではないです。それと事実が特定されないように、複数事例を混ぜて、フェイクも入れてます。

*2:ぼくが疎かっただけかもしれないけど。