マネジャーの資質で大事なものは:
・私心が無いこと
・メンバーに興味をもち敬意を払うこと
・責任追及よりも問題解決を志向すること
主にはこの三つである。という話をしたのが前回。そして:
決断力、責任感、リーダーシップはマネジャーに必須な資質なのか?
そんな問いかけで終わっていた。
今回は、「リーダーシップ」について。
リーダーシップの意味は「集団や組織、国家などを『lead』することに長けた能力のこと」。では、リードとは何かというと「人をどこかに連れていくこと」。後に従う人々の先頭に立って進むこともあれば、優しく引率することもある。じゃあ、リーダーはというと、辞書には「中居くん、大野くん、など」とある。
ウソです。リーダーとは「集団や組織、国家などを率いたり(direct)支配/指揮したり(control)する者」のこと*1。
イメージとしてはこんな感じかな。進むべき正しい方向に旗を立ている感じ。
リーダーシップの意味「その1」
正しい方向を示すこと
じゃあ、旗を立てたら、チームの皆がそれに従ってそこに進んでくれるかといえばそうではない。それが正しい方向だと、チームの皆に理解して貰わなくてはならない。メンバーはそれぞれ個性を持った人間なのだ。人間は納得しないと動かない。
リーダーシップの意味「その2」
正しい方向を「正しい方向だ」とメンバーに納得させること
でも中には納得しない人がいる。反対する人もいるし、日和見をする人もいる。そもそもどこに行こうがどうでもいい人もいるし、どこにも行きたくない人もいる。そんな人もとりあえずは動かさなくてはならない。とするとですね...
リーダーシップの意味「その3」
正しい方向に向かわせる「力」を持っていること
ここまでくれば、チームは動くでしょう。ところがね、最後にもう一つ、重要なことがある。それがリーダーシップの意味「その4」
たどり着いた正しい方向が「正しい」と証明できること。「正しかった」という結果を明確にメンバーに納得させ、さらに、その利益をメンバーに分け与えること。
要するに「このビジネス分野に挑戦だ」と言ってチームを率いたとして、メンバーのほとんどが喜んで賛同して、一所懸命やったけど...
ビジネスとして失敗した。
そんな時には「リーダーシップがあった」とは言われない。
「無謀だった」
と言われるのだ*2。
リーダーシップについては、いろんな人がいろんな考えを持っていて、それぞれとても参考になる。でも、どの段階の、どのレベルのリーダーシップのことを言っているのかというと人それぞれだ。
ちょっと考える角度を変えてみる。
誰かが、何かを決めて(意思決定)、それを表明(意思表示)する...
「その1:正しい方向を示す」だけなら、これで足りる。要するに「言えばいい」のである。しかし...
「その2:正しい方向をメンバーに納得させる」ためにはそれでは足らない。
メンバー*3の意見を聞いて、話し合って検討して(彼らの意見を聞くかどうかは別にして)、その上で決めて(意思決定)、それを表明する。メンバーの意見を聞いて検討するというプロセス、つまり、メンバーも意思決定のプロセスに参加すること、少なくとも参加したという気持ちにさせることは不可欠である(下図)。
意見を聴取したとしても、自分の意見が採用されなかったらメンバーには不満も残る。意見の是非よりも、そもそもなんでも反対する人もいる。政治的に意見を曖昧にしてアクションを起こさない人もいる。だから...
意思表示には「みなが納得してくれる土壌」と「影響力」、さらには「強制力」が必要である。その力の背景には、メンバーが心腹している場合もある。あるいは、リーダーの威厳や地位による場合もある。ともかく「影響力」「強制力」という力。それが...
「その3:正しい方向に向かわせる「力」を持っていること」の意味である。
まだある。ビジネスの実務はここまででは終わらない。
「その4:たどり着いた正しい方向が「正しい」と証明できること。「正しかった」という結果を明確にメンバーに納得させ、さらに、その利益をメンバーに分け与えること」
ここまでくると、実は「リーダーシップ」云々ではなく、「運の良し悪し」の話にもなってくるのである。
どのレベルのリーダーシップを誰が発揮できるか、すべきか、については、どこのどんなチームが、どんな状況で誰のリーダーシップが求められているのか、誰のリーダーシップをどう発揮すべきなのか、具体的、個別的な状況で考えるべきであろう*4。*5
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上で触れた「みなが納得してくれる土壌」はどうやったらできるのか? という話なんですが、それは「マネジャーの資質と技術」そして「今までの実績」がものを言うし、さらに「その人の地位(部長とか本部長とか)」も無視できない重要な要素である。
詳しくはまた次回で。
© 朽木鴻次郎
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*1:ロングマンの英英辞典に依拠した。
*2:もしかしたら、先駆者として何年も経ってから評価されるかも。でもそれではチームの誰も救われない。
*3:全員のこともあれば、主要人員だけのこともある。
*4:訴訟担当の法務チーム-3名が裁判の方針を外部弁護士を交えて考えるときと、特殊詐欺対策班の警官チーム15名が捜査令状を貰って現場に踏み込むときとでは全く違うでしょうね。
*5:先日、モーリン・オハラとジョン・ウェインの西部劇「百万ドルの決斗」を観ていた。悪漢一味に家を襲われ、孫をさらわれたテキサスの大地主のモーリン・オハラが主宰する対策会議でのこと。どうしたらいい?と聞くモーリン・オハラに、まず、保安官やテキサスレンジャーが意見具申する。その上で、モーリン・オハラは、「いいえ、私は夫(ジョン・ウェイン、有名な老ガンマン、訳あって長く別居中)を呼ぶわ」と決断して皆に告げる。意思決定と表明のプロセスとして学ぶことが多い。人生、至る所に教えはあるものですな。