英文契約のイロハ、と言うよりも、事務屋の仕事のイロハを教えてくれたのは、上司の O-さんでした。当時 O-さんは40歳になったばかり、ぼくは25-6歳でしたから、もう30年以上になる。
ぼくとしては感謝したし、職務を離れて個人的ないい関係を築いた/築けたつもりではいました。その後、転職を何度か繰り返しましたが、O-さんが教えてくれたこと、そして、その教えを受けていたからこそ経験できたこと、それが全ての基礎になっている気がしています。
「コージロー、書類は美しく作るんだ」
ただ、最初の転職以来、O-さんとの関係は途絶えてしまいました。O-さんから教わった様々なことをその会社に還元できなかったこと、いわば「持ち逃げ」して転職してしまったこと、何よりも O-さんに転職の挨拶をきちんとできていなかったこと、そんな色々なことが後ろめたかったのかもしれません。
その会社を辞めて数年してから、一度だけ O-さんを街でお見かけしたことがあります。夜の街を向こうから歩いてくる O-さんを認めたぼくは「回れ右」して逃げてしまいました。
今思い出しても恥ずかしい限りです。
申し訳ありませんでした。
その後、ぼくもいろんな会社で、新入社員・若手に仕事を教える立場になってわかることがあります。
教えたことをタネにして、自分で伸びていく人、形通りのデッドコピーで融通の利かない人。教えたことなど全然無視するけど伸びていく人、無視した結果失敗ばかりする人。
ほんと人それぞれです。いろんな人がいる。
だから、新人教育や配属後何年か続く実務研修などで「教えること」「教えられること」なんて言うのは、ほんの「きっかけ」だけなんですね。きっかけにすらならないことも多い。
そうわかっていても、何年かに一度は改めてO-さんへの感謝の思いを新たにします。
何しろね、書類をホチキスとめするのは、未だに O-さん流です。
水平よりも少しだけホチキスの右側を上げる。「唇の端をあげてきゅっとほほえむように」とめるのが美しいそうですヽ(´▽`)/
45度に傾けるなどは「もってのほか!」でした。
書類は美しく作る。
© 朽木鴻次郎
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