〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

聴くときは聴けよ

以下は、昔の法務仲間から先日聞いた話である。彼の了解を得て掲載する。(特定されないように趣旨は変わらない程度にフェイクは入っています。)

 

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以前、パワハラ行為をしたと訴えられた男性管理職(50代半ば)「A-さん」に事情を聴きに行ったときのこと。

 

彼の他部門女性への業務連絡や指導が、適正範囲を超えて厳しすぎるという訴えがあり、訴えてきた当事者女性(20代後半)「B-さん」とその上司(50代男性)「C-さん」に話を聞いた上でのことである。

 

ヒアリングは、人事部門の管理職が行い、法務責任者のぼくは黙って陪席するという手筈だった。人事としては、法務を証人として使いたかったのだろう。

 

A-さんのように責任感や正義感の強い方が、パワハラ なんて考えられないですよ。

と人事部管理職は口火を切った。

 

B-さんは、かつてA-さんのところの新入社員でしたよね。それで余計指導に熱が入ったということですね。

ぼくは、「あれ?」っと思った。虚心にA-さんの意見や見解を訊くべきではないのか?

 

C-さんがあまりB-さんの面倒をみないので、あえて口を出したということですね。それにしてもA-さん、あなた自身も数年前、当時の上司のX-さんのパワハラに悩んでましたね。

ちゃんと事実をA-さんの口から聞こうよ、そう思ったが、ぼくは黙って陪席していた。結局、人事によるA-さんへの聴取は15分程度のものだった。その間、発言したのはほとんどがその人事の管理職だった。

 

最後に人事がA-さんに言った言葉はこれだった。

今後は、あまりB-さんには関わらない方がいいですよ。

 

             *** *** ***

 

翌日、人事部、法務部を統括する副社長に、人事部管理職とぼくが報告に行った。報告するのは人事部管理職である。

 

A-さんは、自らがパワハラを受けた経験から、元部下のB-さんに対して厳しい指導を行いました。本来はB-さんの上司であるC-さんの職務領域ですので、B-さんの行為は、適正業務の範囲を超えているものです。人事としてはパワハラを認定せざるを得ません。

報告を受けた副社長はぼくの顔を見る。「君の意見は?」という意味だ。

 

『人事部による事情聴取は、予め用意したシナリオに基づくもので、正しく事実関係を把握しているとは思えません。私(法務)の方で、きちんと調査した方が公正な判断ができると思います』

 

ぼくはそう言った。事情聴取で、あまり先入観を持ってはいけないと思う。いくら成果主義の会社だからといって、不公正な処分は許されない。

 

聴くときは虚心に聴くこと。

 

・パワハラや職場のいじめをされた被害者はパワハラやいじめを繰り返す。

・正義感が強いとパワハラ傾向が強くでる。

・いじめてやろうという意図ではなく、むしろ部下が可愛くて「正しく指導しよう」という考えからパワハラが発生してしまう。

 

こんな予断を持って事情聴取にあたることはあってはならないんだよな。

 

 

© 朽木鴻次郎
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