〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

もしやあなたは?・タンタン麺の謎

部屋で一人、「タンタン、タンタン麺〜🎵」とはしゃいでいると、和服に総髪、実に堂々とした初老の男性が、ゆらり、と現れた。

「主人、本当のタンタン麺を知らぬようだな、明日、同じ時間にここに来い...!」

 

ここって、ぼくのアパートなんですけど...

 

f:id:tavigayninh:20190407123646j:plain

 

「ラ王の『汁なし担々麺』はなかなか悪くはない。だがこれは、まだまだ『至高のタンタン麺』としては認められぬ」

 

翌日の同じ時間、ゆらり、と現れた総髪、和服の男性は、そばに控える角刈り目の鋭いひとめで一流の料理人と分かる男「N川」に目で指示を出した。N川が取り出したのは、豚バラ肉の切り落としとニラである。

 

f:id:tavigayninh:20190407124048j:plain

 

N川の指導のもとぼくは肉とニラを刻む。

 

f:id:tavigayninh:20190407124142j:plain

 

バラ肉を炒める。テフロン加工のフライパンは買い換えたばかりなのだ。N川は黙って見ている。和服・総髪の男性は厳しい表情を崩さない。

 

f:id:tavigayninh:20190407124259j:plain

 

肉が軽く炒まった上に、ニラをのせる。

 

「火を消せ!ニラに火を通しすぎるのではない!」

男性から鋭い指示が飛ぶ。肉を炒める直前にお湯を注いでいたカップタンタン麺。ちょうど4分、男性の指示通りメーカー指定よりも1分短い。湯を切り、タンタンのタレを混ぜる。

 

「この丼にトングで麺を盛れ!タイミングを逃すでない!」

和服のふところから取り出した無印の丼はちょうど頃合いに温まっている。丼を汚さないようにトングで麺を丼に移す。盛られたてっぺんを少しへこませ、そこに炒めたバラ肉とニラを手早く、しかし、そっとのせる。

 

「カップに余っている『タンタンたれ』をその上から注ぐのだ!」

またもや鋭い男性の指示。なるほど、カップには大さじ二杯分ほどの「タンタンたれ」が残っている。
はっ! もしや、あなたは...?

 

f:id:tavigayninh:20190407124826j:plain

至高のタンタン麺...!

「ぬうぅ、それで良い...」

 

できた...! 逆上して、タンタン麺をすするぼく。ふと気がつくと、二人とも部屋にはもういない。

 

もしや、もしやあなたは、K原U山、せ、先生では...?!

 

せんせ〜い! カムバ〜ック! タンタン麺は、ぼくが守るよ〜!

 

↓↓↓↓↓↓ 後日譚はこちらです。

tavigayninh.hatenadiary.jp

 

© 朽木鴻次郎
~~~~~~~~~~~~~ 

HPはこちらです。

kuchiki-office.hatenablog.com

~~~~~~~~~~~~~ 

 

 

 

 

担々麺にまつわる思い出

1984年中国への初出張(初海外)で広州に滞在した。宿泊したのは流花路にある当時できたばかりのチャイナ・ホテル(china hotel 中国大酒店)。その一階にあった「フードストリート」と呼ばれる中華料理店で初めて「担々麺」を食べた。もちろんスープはない。日本のお茶碗ほどの小さなお椀に盛られた「汁なし坦々」である。

f:id:tavigayninh:20190331061313j:plain

 

実はその初出張/初海外の前にも、一期上の食通な先輩に新橋の台湾屋台みたいなお店に連れて行かれたことがある。だから「台湾わんこそば」って言われていた小さなお椀に盛られて味付けのひき肉と刻みネギがかかった、いわゆる「台南坦仔麺」みたいなのは食べたことはあった。

 

しかしですね、チャイナ・ホテルで食べた汁なしの担々麺の「麻辣(まーらー)」にはびっくりしましたよ。日本でも麻婆豆腐は丸美屋のものを食べたことがあったけど、全然違った。麻辣味の担々麺は舌が痺れるからさでした。もちろん「台南坦仔麺」とも全然違う。

 

フードストリートのウエイトレスさんたち(当時は「小姐(しゅうちぇ)」と呼んでも怒られなかったよ*1)、日本人が珍しいのか、食べ方がおかしいのか、ぼくたちを見て、くすくす、くすくす笑ってた。着ている真っ赤な本場のチャイナドレスもすごく素敵でした。かわいかったな...
当時のぼくと同じくらいの歳、せいぜい20代の半ばだったから、今はもうお孫ちゃんが何人かはいるお年頃なんだろう。ん?一人っ子政策ドンピシャだから、お孫ちゃんは一人だけなのかもな。

 

f:id:tavigayninh:20190331062032j:plain

 

その後、ぼくは転職して、色々会社も変わったし、いろんなところで担々麺も食べたけど、日本で汁なし坦々もいっぱい食べたけど、やっぱりチャイナ・ホテルの担々麺は忘れられない。

 

もしかしたら、今あの担々麺を食べたら、「うーん、こんな味?だったのかな...?」とか感じてしまうのかもな。初恋の彼女が自分の頭の中では広瀬すずさんとそっくりだった記憶がある、みたいな?ヽ(´▽`)/ *2

 

担々麺は、汁なしだよね〜。

 

2019.4.1 追伸

新元号は「麻辣(まーらー)」、出典は汁なし坦々麺。

f:id:tavigayninh:20190401123517j:plain

おいおい、エイプリルフールだぜヽ(´▽`)/

ラ王の汁なし坦々麺、なかなかのおいしさです。 

 

© 朽木鴻次郎
~~~~~~~~~~~~~ 

HPはこちらです。

kuchiki-office.hatenablog.com

~~~~~~~~~~~~~ 

*1:今は「服務員(ふーぃぇん)と呼ばないといけないらしい。てか、誰を呼ぶのも「你好(ニーハオ)」だったのにはびっくりした。地方から来る若い人が多いせいなのかも。

*2:5年ぐらい前に同窓会で会った。中二の頃と同じく、いやもっと可愛らしかったさ、そりゃあもう。

本当の枝豆の食べ方はね

f:id:tavigayninh:20190329065308j:plain

塀の上にいるのはだれ? 落ちたら割れちゃうのにさ

"I don't know what you mean by 'glory,' " Alice said.

Humpty Dumpty smiled contemptuously. "Of course you don't—till I tell you. I meant 'there's a nice knock-down argument for you!' "

"But 'glory' doesn't mean 'a nice knock-down argument'," Alice objected.

"When I use a word," Humpty Dumpty said, in rather a scornful tone, "it means just what I choose it to mean—neither more nor less."

 

「あなたがどんな意味で『栄光(glory-グローリー)』という言葉を使ってんのわかんないよ」とアリスは言いました。

ハンプティ・ダンプティは小馬鹿にしたように笑いながら、「わかるわきゃないさ、説明してないんだもの。『びっくりしてひっくり返っちゃうような理屈 (argument) 』という意味で使ったんだ」

「だって『栄光』にはそんな『びっくりしてひっくり返っちゃうような理屈 (argument) 』なんて意味はないじゃない!」とアリスは口をとんがらかしました。

すると、ハンプティ・ダンプティはなんかちょっと見下すように言いました。
「吾輩が言葉を発するときにはだな、吾輩が意味するところの意味を意味しておって、正確に意味するだけのこと以上の意味も一部だけの意味でもさにあらず、その意味で他の意味は意味しないのだ」

        鏡の国のアリス- ルイス・キャロル

 

これを「ハンプティ・ダンプティの定義」という。

 

f:id:tavigayninh:20190329071403j:plain

割れてる? 関係ないよ、食べちゃった

 

「そうじゃない、本当の枝豆の食べ方はね......」

「日本人はお風呂の入り方が下手なんだと思うのですよ。お風呂を上手に入るためにはこうするんです」

「リーダーシップとマネジメントを混同してはいけない。目的と目標や、戦略を計画と勘違いしている人も多いです。ですから私たちの提案では......」

「インターネットが進んでどんどんどんどん不確実性が増している現代......」

「働き方改革により、現場では『ジタハラ(時短ハラスメント)』が増えるでしょう」

「土方や沖田に比べて、影が薄い近藤勇ですが......」*1

「モラハラ(モラルハラスメント)はパワハラやセクハラに比べて、あまり認知されていませんが、実はとっても深刻な問題を引き起こすものであって.......」

 

+++++++++

 

自分で前提や言葉を定義したり作ったりして、それが正しいとか正しくないとか、この世の中はハンプティ・ダンプティばっかりだ。

 

ぼくが好きな玉子の食べ方は、目玉焼き。サニーサイドアップ。

f:id:tavigayninh:20171202073936j:plain

 

目玉焼きじゃないじゃん!?

 

吾輩はこれを『目玉焼き』と定義してそう呼ぶのだ。吾輩が『目玉焼き』という言葉を使う場合それ以外の意味は一切排除している。
『定義(difinition)』と『性質決定(qualifications)』とは違うのだよ。

  

© 朽木鴻次郎
~~~~~~~~~~~~~ 

HPはこちらです。

kuchiki-office.hatenablog.com

~~~~~~~~~~~~~ 

*1:新撰組ファンだという女性漫画家がTV番組(天然理心流の実戦での強さを検証するものだったな)でのたまわってて、本当、塀の上から落っこちそうになるくらいびっくらこいた!