部屋で一人、「タンタン、タンタン麺〜🎵」とはしゃいでいると、和服に総髪、実に堂々とした初老の男性が、ゆらり、と現れた。
「主人、本当のタンタン麺を知らぬようだな、明日、同じ時間にここに来い...!」
ここって、ぼくのアパートなんですけど...
「ラ王の『汁なし担々麺』はなかなか悪くはない。だがこれは、まだまだ『至高のタンタン麺』としては認められぬ」
翌日の同じ時間、ゆらり、と現れた総髪、和服の男性は、そばに控える角刈り目の鋭いひとめで一流の料理人と分かる男「N川」に目で指示を出した。N川が取り出したのは、豚バラ肉の切り落としとニラである。
N川の指導のもとぼくは肉とニラを刻む。
バラ肉を炒める。テフロン加工のフライパンは買い換えたばかりなのだ。N川は黙って見ている。和服・総髪の男性は厳しい表情を崩さない。
肉が軽く炒まった上に、ニラをのせる。
「火を消せ!ニラに火を通しすぎるのではない!」
男性から鋭い指示が飛ぶ。肉を炒める直前にお湯を注いでいたカップタンタン麺。ちょうど4分、男性の指示通りメーカー指定よりも1分短い。湯を切り、タンタンのタレを混ぜる。
「この丼にトングで麺を盛れ!タイミングを逃すでない!」
和服のふところから取り出した無印の丼はちょうど頃合いに温まっている。丼を汚さないようにトングで麺を丼に移す。盛られたてっぺんを少しへこませ、そこに炒めたバラ肉とニラを手早く、しかし、そっとのせる。
「カップに余っている『タンタンたれ』をその上から注ぐのだ!」
またもや鋭い男性の指示。なるほど、カップには大さじ二杯分ほどの「タンタンたれ」が残っている。
はっ! もしや、あなたは...?
「ぬうぅ、それで良い...」
できた...! 逆上して、タンタン麺をすするぼく。ふと気がつくと、二人とも部屋にはもういない。
もしや、もしやあなたは、K原U山、せ、先生では...?!
せんせ〜い! カムバ〜ック! タンタン麺は、ぼくが守るよ〜!
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© 朽木鴻次郎
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