〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

交渉について

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交渉ごとのキモの一つは、行き当たりばったりに行うのではなく、どんな条件だったら合意していいのかという「合意可能領域」をあらかじめしっかりと考えておくことだ。

便宜上「領域」と書いた。中古のカメラに「5万円から8万円、いや、8万5千円が上限だな!」とまさに領域の場合もあるだろう。また、「話題、争点になるのは、1〜5までの5項目。そのうちの3番と5番だけはどうしても譲れない。後の3項目は最悪譲ってもいいや」という個別条件の形になる場合もある。その複合になることもある。ともかくも、こちらとして、何がほしいのか、何は主張するけれども、最終的には譲ってもいいのか、それをきちんと考えておく。それを便宜上「合意可能領域」と言う。

 

この「合意可能領域」に加えて、さらに、最悪その人と合意に至らなくてもいいや、別の方策もあるしさ、そんな代替策があれば越したことはない。*1

 

イメージはこんな感じかな。

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相手方は、あなたの合意可能領域や代替策を探り、そこに攻撃を仕掛けてきたり、揺さぶりをかけてくる。あるいは自分の合意可能領域や代替策を、過少なものに見せたり、過大なものに見せたりして、あなたを幻惑しつつ交渉を進めることもある。多分、あなたも同じことをする。

 

そんな攻撃と揺さぶり合いの中で、あるいは幻惑を仕掛けたり見破ったりするコミュニケーションの中で、合意可能領域も代替策も、交渉が本格化するに連れて変化していくし、変化せざるをえないものだ。

それでいいの。その変化をしっかりと認識し、どう変わったかを意識することが大事なのだ。でないと「思いつきで行き当たりばったり」な交渉になってしまう。合意可能領域も代替策も、いわば交渉という航海における羅針盤のようなものです*2。交渉の過程で、羅針盤の指し示す方向は変化する*3

 

相手も自分も、交渉の中で変化する双方の合意可能領域を考えて、ある時点で合意ポイントが見つかったとき、あるいはヘトヘトになって、これでもういいやと思ったときに*4交渉が成立する。見つからなければ不調となる。これが一つの交渉の形だ。*5

 

とは言っても、実務ではそんな単純ではない*6。下のイメージをみてみよう。

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相手が考える合意可能領域や、相手が代替策があるかどうか、そんなものはわからない。それはいいんだけど。

 

こちらには「代替策」などない。その相手をうまくやることが至上命令。

 

「合意可能領域」だってそうだ。決めたつもりでいたはずが、思わぬタイミングで上司やライバルのチャチャが入り、あなたの梯子は外されまくるのです。困ったもんだ。

 

困ったもんだとは言いながら、それが現実だ。ただ、相手側にだって困った上司はいるかもしれないし、代替案なんてないのかもしれない。合意可能領域なんて考えもせず「行き当たりばったり」で交渉にのぞんできている可能性もある。ホントもー、大変なんですよ。それでも今回は、少なくとも相手方は何かの合意を(それがこちらの合意可能領域からはものすごくかけ離れたものであったとしてもともかくは合意を)求めている場合の交渉の話だ。

 

もっと大変なのは、相手はそもそも合意など求めていない場合、例えば抵当住居からの退去であるとか担保物権の引渡しなどを拒絶している場合。ゼロ回答、NOしか考えていない相手との話し合いは難しい。強制的に解決する方法もあるけど、できればうまく決着はつけたいよね*7

 

tavigayninh.hatenadiary.jp

 

 

© 朽木鴻次郎
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*1:合意可能領域は"ZOPA"、代替策は "BATNA"と呼んだりするらしいのですが、別に英語を使う必要はないかな。

*2:航海をしたこともないし、羅針盤も使ったことはないけどね。

*3:計画はね、実行着手したときから、その瞬間から変更を余儀なくされるものなのだ。変更を余儀なくされるのに、なぜ作るのか?どのような変更が余儀なくされたかを認識するためなのだよ。

*4:いわゆる「ゴミ箱モデル」というやつです。

*5:もう一つの形は交渉というよりも折衝に近い。こちらの合意可能領域は極めて狭く、変更の余地が少なく、相手の合意可能領域は、こちらの合意可能領域を全否定するものである。例えば、2020年2月コロナウィルス感染患者を受け入れる病院と地方自治体、それに反対する近隣住民との折衝のケースである。違ったタイプの交渉(折衝)であり、コミュニケーションのタイプも変わってくるのは当然のことだ。

*6:合意可能領域と代替策を意識することは、単純ではないが、無意味であるとは思わない。

*7:ちょっと長くなったので、別の記事にします