〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

「咄も剣も自然体」柳家小さん

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「咄も剣も自然体」五代目柳家小さん・東京新聞出版部1994年。

 

小さん、面白かったなぁ。「長短」「御慶」「長屋の仇討ち」...
円生、馬生、小さん。いい時代に話が聴けたものです。

 

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昭和10年に兵隊検査で甲種合格。翌11年1月に入隊してすぐ2.26事件。麻布の三連隊の重機関銃隊で、桜田門を占領して、一夜を明かす反乱軍の前で一席話したという有名なお話ですね。(全然ウケなかったらしい。当たり前だ。)

三連隊が満州に派遣されたのは懲罰ではなかったと証言しています。小さんは一旦除隊(上等兵)したものの、再度召集されて今度は南部仏印、サイゴンに上陸して「ナトラン」って書いてありましたが「ニャーチャン(Nha Trang)」でしょうね、そこでの警備。観光地だったもんでフランス女性の水着見てたってヽ(´▽`)/  その後昭和20年には仏軍討伐にも参加している。「敵の戦車をぶんどった」って写真を見てみたら、ルノーFTでやんの*1

当時「兵長さん」まで昇ったってから軍隊じゃカミサマですよ。

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ある博打の話をするために「本職」からツボ振りのしぐさを学んで客席から「うまい!」と声がかかるほどだったが、先代小さんから「あれはだめだ。バクチの仕草は上手くできるとしても、わざと下手にやる。バクチとかのヤクザなしぐさが上手すぎると話が下卑る」と教わったそうだ。

また、先代の高座から、落語「芋俵」のサゲは「気の早いお芋だ...」で終わって、すっと舞台から下がるのが粋だと学んだという*2

 

あっさりと品のいい、それでいて子供のぼくでも腹を抱えて笑える落語家さんでした。

名人と言われるくらいになった人の話は、実にためになる。

自然体ですよ、これでインスタントかい?

 

© 朽木鴻次郎
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*1:旧式も旧式、当時で20年くらい前の戦車です。

*2:するとお客が一瞬間があってざわざわとウケるそうな。「気の早いお芋だ、食べる前からおならになった」とオチの説明をするのはいけませんな、と

「空気を読めよ〜!」とは何を意味しているのか。

 

『わしの幸福は二十三年前の戦争とともに消えちまったんだが...』

あるところに善良なおじいさんがいたが 特攻隊でふたりのむすこを失い

そのうえ空襲で妻をなくして一人ぼっちになってしまった

それからというもの じいさんはすっかりいじわるになってしまった

世の中のすべてのものにねたみを感じ

人が 幸福にくらしているのがにくたらしくてならなかった

町に出ては りっぱな門柱に小便をひっかけたり

外車に くぎで傷をつけたりするのが たったひとつの楽しみだった

人が 少しでも不幸になるのが楽しいのだ

「本日の死亡事故」の掲示板に

死亡者の数が多い日には 酒盃をあげてよろこぶのだ

いじわるじいさんは きょうもいじわるの旅をつづけていた...

(水木しげる「天邪鬼」ゲゲゲの鬼太郎 1968年)

 

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「空気を読め!」 とは何か。

 

「空気を読め」ということは、その場の主流の意見がどういうものであって、どの方向に流れ向かっているのかを「理解しろ」ということだ。

さらに「理解しろ」にとどまらず、「お前もそれにならえ」ということでもある。

 

「反対するな」「流れに逆らうな」と言っている。

自分の意見を持っていても殺せ、自分の正しいと思っていることも言うな、するな。「皆の行動に合わせろ!」そういうことなのですね。

 

だって、それが利口なヤツのすることだろ?

 

山本七平の「空気の研究」、今調べたら1983年の本1977年の本だったのだな。空気に流されてしまって戦争に向かったことへの痛切な批判だった。

いつの間にか、その場の空気を読んで、それに流されることが「空気読めよ〜!」などと、堂々と肯定的に求められるようなってしまった。

 

多様性などと言っちゃてさ、多様性は認めるにしても、少数派に恭順や多数派への同化を求めているんだよ。

 

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若い頃、ある社運をかけた交渉ごとの下働きをしていたことがある。先方への主張提案を取りまとめて、担当役員の了解も得るのだが、いざ交渉会議のときに何も言わないのね、その役員さん。

どうして提案しないのですか...? とわざとナイーブに聞くと;

 

バカ者! そんな空気じゃないんだ!

 

その交渉ごとは大失敗で、会社は潰れてしまった。バカ者はどっちなんだと、その役員さんの歳も超えてしまった今、そう思う。もちろんだよ。

 

空気を読んで、流されない。心したい。

 

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「南の島に雪が降る」

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加東大介「南の島に雪が降る」光文社知恵の森文庫

 

最初に「南の島に雪が降る」の映画を観たのが1973年のこと。もちろんテレビで放映されたのを観たのです。それから1〜2回テレビで観た。

街のビデオレンタルが始まって、Hなビデオが観たくてソニーのベータ規格デッキを買ったのが確か1986年のことだと思う。タナにこの映画を見つけて借りて観た。

加東大介の原作があると知り、探したけど見つからなくて、アマゾン、てか、インターネットのない頃でしたからね、図書館で、字の大きい(老眼用)単行本があったので借りて読んだ。

今回、文庫版をアマゾンで買って読んだ。

中国、マレーシア(ボルネオ)、ベトナム南部と石油探鉱に関わったので、嫌でも当時の日本の「南進」は意識せざるを得ない。石油が欲しいからと言って、戦争して分取っちゃえ!というのはあまりにも乱暴すぎるけど、なんでニューギニアまで行くかな... 今の技術だって難しいシャローウォーター(浅瀬)での石油開発なんて当時は考えてもいなかったんだし。既得のインドネシアや北部ボルネオの油田は、輸送手段がなくて現地で溢れちゃってるってのに、なんで太平洋を東へと進んでいくかな。なんで、輸送団の護衛もできないのに、米航空母艦ばっかり狙ってくのかな。

 

映画では、ニセ如月寛多を渥美清が好演してたね。映画のDVDはアマゾンで見つけたけど、高っかい(x万x千円!)ので買いません。NHKのBSとかでやってくれないかな。

 

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