あの時、こうしていれば——
そんなふうに思うことはありませんか。
中国配信ドラマ「你好1983」を見ていると、自分の新入社員の頃と重なり、どこか甘酸っぱい気持ちになります。
1984年、新入社員のぼくは広州に長期滞在していました。当時の中国といえば、広州のホテルの印象しかありません。なにしろ外国人は許可されたホテル以外は自由に外出できない時代でした。だからこそ、このドラマに描かれる農村部の暮らしには、「当時はこういう世界だったのか」とあらためて感じさせられます。
滞在していた中国大酒店で、ハウスキーピングの同世代?の女性にソニーの薄型ウォークマンを帰国のときにプレゼントしたことがあります。驚くほど喜ばれて、「そこまでか」と思った記憶がありますが、彼女が農村出身だったとすれば、その反応も自然だったのかもしれません。レストランで親切だった魏小姐(うぇいしゅうちぇ)に哈密瓜(はみぐわ)を差し入れたときにも、とても喜ばれたことを思い出します。

いまでは目を見張るような深圳ですが、当時は、赤い土がむき出しで、あちこちで建設が始まったばかりでした。「ここがいったいどうなるのだろう」と思っていた場所が、今では世界有数の都市になっています。
バブルの時代、中国の発展、そして中国でも、日本でもの投資ブーム。そういえば、ちょー円高の時もありました。
振り返れば「チャンスだった」と言える場面はいくつもあります。
もっとも、ぼく自身はバブルにも、投資のチャンスの大波にも乗れないまま、気がつけば60代半ばを過ぎました。
ただ——
後悔しているわけでも、あの時こうしていればよかったと思っているわけでもありません。
ただ、もしあの時違う選択をしていたら——そんなことを、少し甘酸っぱい気持ちで思い返すことがあります。
でも同時に、こうも思うのです。
人生は、いいとこ取りはできません。
ある選択をすれば、別の何かは手に入りません。
もし別の道を選んでいたら、また違うものを失っていたかもしれません。
だからこそ、過去を悔やむのではなく、
少し距離を置いて眺めるくらいが、ちょうどいいのかもしれません。
とはいえ、現実に戻れば、来週からは研修が始まります。お仕事が目白押しです。

『あのブドウは、すごく酸っぱかったんだよ。あの哈密瓜はすごく甘かったし、魏ちゃんはかわいかったなあ...』って
過去を甘酸っぱくも懐かしく、5割り増しぐらいに美化して振り返るって、60代の特権なのかもしれませんね。
©️ 朽木鴻次郎 プロダクション黄朽葉
~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~