〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

過剰なカスタマイズが生産性を阻害する?

      

日本*1の生産性が低い要因についてはさまざまな議論があるが、その一因として「細かすぎる対応」が挙げられるのではないだろうか。

例えば、企業の業務システム導入の場面を考えてみよう。海外では、ベンダーが提供する標準パッケージをそのまま活用し、業務プロセスをシステムに合わせる形を取るケースが多い。しかし、日本では「自社のやり方に合った形で運用したい」という意識が強く、カスタマイズを繰り返してしまう。結果として、

  • システムの導入に時間がかかる

  • 維持・運用コストが増大する

  • 転職者や外部の人間にとって使いづらいシステムになる

といった問題が発生する。

このような過剰なカスタマイズの傾向は、システム導入だけではなく、日常の業務にも見られる。

例えば、稟議書や企画書の作成においても、「この表現をこう変えてほしい」「フォントをこの種類に統一してほしい」「レイアウトを少し変えてくれ」など、内容に大きな影響を与えない細かな修正指示が頻発することがある。

確かに、細部にこだわることで見ためや完成度が上がることもあるだろう。しかし、こうした微調整が積み重なることで、

  • 作業時間が増える

  • 本来注力すべき内容の議論がおろそかになる

  • 変更のたびに関係者の承認プロセスが発生し、意思決定が遅れる

といったデメリットが生じる。

さらに、細かい修正指示の背景には、上司の「存在感を示したい」という心理が影響している場合もあるのではなかろうか。

例えば、本来はどちらでも良いような変更(「ここは赤より青のほうがいいんじゃないか?」など)をあえて指摘することで、自分の影響力を示そうとするケースだ。このような指示が発せられると、部下は「上司の意向なのだから」と忖度し、それをさらに別の下請け業者に依頼することもある。こうして、

  • そもそも不要な修正が発生する

  • 意図が曖昧なまま仕事が進み、余計な手間が増える

  • 最終的に、成果物の本質的なクオリティにはほとんど影響がない

といった状況が生まれてしまう。

重要なのは、「その変更が本当に必要なのか?」を冷静に判断することだ。カスタマイズや修正の要求をする際には、「この変更によって業務の効率や成果がどれだけ向上するのか?」を考えるべきだろう。

「きめ細かい対応」は日本*2の強みでもある*3。しかし、それが過剰になると生産性を阻害する要因なっている。細部にこだわる馬鹿馬鹿しさを知るべきとぼくは思う。

 

©️朽木鴻次郎 プロダクション黄朽葉
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*1:だけではないのかもしれないけど。

*2:だけではないかもしれないけど。

*3:かもしれない。