〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

吉野家事件について(2022年4月)その1

ちょっと古いですが(京都四条の吉野家さんで)

吉野家事件、とあるコンサルの方は「役員クラスの研修啓発活動が必要」という趣旨のことをおっしゃってるし、吉野家さんも「ちゃんと研修して啓発活動します」とおっしゃていて、それはそれでいいんだと思いますが(ぼく自身企業研修講師ですし)。

研修や啓発活動ではこの手の問題には対処し切れないのです。なぜならば
「わかってないからやってしまう」のではなくて
「わかっちゃいるけど制止できない(止められない/断ち切れない)」からなんです。

何をしていけないのか、いいのか、そんなことはちゃんと分かってるんですよ。

問題の伊東氏も「やばい」とは思っていたんですが、自己顕示欲なのか慢心なのか、自分で自分を「制止」することができなかった。

ぼくの勘ぐりですが、伊東氏はこの手のヤバめ発言は以前から社内であったんだと思います*1。吉野家さんの社風とまではいいませんが。伊東氏は同様の「ヤバめの発言や比喩表現をして注目を集める」というやり方していたと思う*2。周りの役員や部長連も「こいつもしかしたらヤベーヤツ」とは思っていたけど「制止」することができなかった。これは、伊東氏の自己顕示欲とか慢心とか、たかを括っていた、そんなことにより自分で自分を制止できなかったのとは違って、周りの役員や部長連が止められなかったその理由はというと:

「マーケティングの大物の伊東さんに事前にストップかけたら、自分の利益にならない、むしろ、自分の不利になる」と判断したんだと思います。

「わかっちゃいるけど制止できない(止められない/断ち切れない)」からだったんだと思います。

どういうことか?

・マーケティングの専門と鳴り物入りの伊東さんだ
・そんな物言いは、ノー、ダメだと言って、伊東さんに嫌われる、伊東さんを引っ張ってきた役員〇〇さんに嫌われる*3
・コンプライアンス/ジェンダー的にダメだと言っても、伊東さんとマーケティングの土俵で議論しても負けるだろう
・仮にストップかけて、実際に問題発言がされなかったとしても、それでストップかけた自分の手柄になるわけではない。
↑↑↑
こんなことで、手柄にもならないことに口出して損をするなんて、脇が甘い。

そう考えて、何も言わないんだと思います。

これは研修して、啓発活動して、どうにかなるものではない。だって「田舎から出てきた生娘に〇ブ」なんてダメに決まってるもの。分かってますよ。

じゃあ、研修啓発活動以外でどーすんの? というと。

取締役(と執行役員+部長クラス)全員にペナルティです。

取締役はもとより業務執行を監視する必要がある。みざる言わざる、の責任をとらせて、今後、みざる言わざるは、逆に自分に火の粉が降りかかるんだなと、肝に銘じてもらわないと。

執行役員や重役にはそんな法的な責任はないけど、やっぱりこれだけのことが見過ごされてきたんだ、今後第二の「生娘に〇ブ」が発生しないためにも、「言わなければいけない意見は忖度せずに言う、言わなければ自分にも責任が及ぶ」とちゃんと理解してもらうことこそが肝要と思います。会社の経営、もしくは経営に極めて近い人々なんだから、自部門以外のことも自分ごととして、「空気を読んでも忖度せずに」是々非々の発言をし続けないといけない。そんな是々非々の発言受け入れられるかどうかは、また別の話ですが*4

その2に続きます。

吉野家事件について(2022年4月)その2


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ぼく自身、牛めしは吉野家オシです*5。狂牛病で一旦牛丼の販売を停止したとき、最後の日に食べに行きました。再開したとき、また行きました。

『牛丼、なみ! ツユ抜きで! あと、ミソ汁と玉子』

1984年新入社員の頃、有楽町駅のガード下のお店、朝ご飯食べてから、口のはたに玉子の黄身をつけたままで出社したものです*6

がんばれ、吉野家!明日はホームランだ!

 

追記4/20:『取締役(と執行役員+部長クラス全員)にペナルティ』は連帯責任とは違います。取締役は業務の執行を監視する法的な責任があります。執行役員や部長クラスには法的な責任はないものの、「あいつがあんなことをするとは知らなかった」とは言えない立場の人たちであると思います。

追記4/21:問題発言(講義)があったのは4/16。4/19の報道によると伊東氏は取締役解任されたとのこと。伊東氏は吉野家ホールディングスの執行役員で、子会社株式会社吉野家の常務取締役、そんな立て付けだったのですね。吉野やホールディングスの開示文章には「本日(解任日4/18の翌日)行こう、当社と同氏との契約関係は一切ございません」って、よっぽど腹立てたんでしょうね。

追記4/21:早稲田は希望する受講生には受講料(38万円!)を返還するそうですし、吉野家は開発に10年をかけた、つまり、社命をかけた新製品の親子丼のローンチに味噌つけられるし株価は下がるし売り上げ減少も懸念される中、伊東氏に対する早稲田からの損害賠償請求、吉野家側からの法的措置の成り行きがどうなるか、というところです。

 

© 朽木鴻次郎
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*1:いやいやここまでのキャリアを気づいてきた人なんだから、普段はそんなことは口走らないはずだ、という推測もまたあり得るとは思います。

*2:でないと「生娘」なんて表現はヒョイとは出ない。

*3:怒りを買ったら自分もやられる。

*4:受け入れられるようにいろいろ画策するんですよ、大変ですけど。危険も伴いますよ。でもしなければならない。そのために、生活費の2-3年分は用意しておかないとね。

*5:ちなみに最初に食べた牛めしは「たつ屋」のものです。焼きドーフが入っていて、美味しかったなあ。1970年代の終わりから80年代半ばにかけて、日本橋室町、実家の近くにあったのよ。いまは店舗数は減ったみたい、でもたつ屋さんはちゃんと営業している、とググって知りました。今度行こう!

*6:同期の女性に「なにつけてんの!やだ〜!とか言われて嬉しかったなあ。