〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

混ぜるな危険!

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おい、クチキ〜、ISOってありゃなんだ!?

zoomでのサシ飲みののっけから K-は新しい職場での不満をぶつけてきた*1。古くからの法務仲間の彼はぼくと同い年、2020年に60歳になりこの3月末で退職、そのまま再雇用の道は選ばず、とある中部地方のメーカーの法務部長の職に転職した。誰かの紹介でもなく、取引先でもなく、自分で転職先は探したというから大したもんだ。

ただ、商社法務でキャリアを重ねてきた彼は早くも製造メーカーで異文化を感じたらしい。

ISOの内部監査だっていうのに、業務状況の事実調査もそこそこに、監査員が自分の『ご高説』と滔々と述べるんだよな!

「ここは『ストロングポイント』ですね、しかし、こう改善すればもっと良くなりますよ」とか、「この登記業務は司法書士に任せた方がいいのではないですか?」とか言ってくるのさ。そのアドバイス自体は悪くはないし、オレも着任してすぐにそう感じてたことだからいいんだけど、監査員が業務執行に関与して口出ししていいものなのか?

ありゃー、監査じゃないな!

 

そう言いたい気持ちはよくわかる。ぼくも製造部門に異動したときに同じ感想を持ったと K- に話した。そして、ISOの内部監査はそう言うものさ、認証機関の審査員なんかきた日にゃ、おまえ、びっくりするぞ、とちょっと脅かしてやった。つまり製造メーカーのISO9000とかで行われている「監査」は法務や会計の「監査」とは別物なんだよ、と。

 

そっかー、お前に話してよかったよ。転職早々で、古株の品質保証部の人間に噛み付いて、敵は作りたくないからな。

とはいえ、法務や経理、事務屋にとっては、監査と業務執行は別物。監査は違法や手続き違反は指摘するが、業務執行の良し悪しを評価したら、監査にならない。監査で「とてもいい」と評価したことや「こうした方がいい」という改善提案が実は不正に繋がったりしたら大変なことになる。業務執行は執行の責任者に任せるべきなのだ。

エンロン事件以後、会計法人のアドバイザリー部門とオーディット(監査)は峻別されるようになっている。彼にとっては百も承知なそんな話もした。

 

だよな〜、監査(audit)と執行(operations)はまぜるな危険、だよな〜

ぼくが勧めた「逆・タイムマシン経営論」を先日読了した彼は笑顔でそういった*2

うまく脇を固めて、後三年はしぶとく生き残るぜ。

そうそう、その意気だ。

おれは会社勤めで気を使うのはもう嫌だけどな。あはは。

 

tavigayninh.hatenadiary.jp

 

©️ 朽木鴻次郎
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kuchiki-office.hatenablog.com

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*1:彼と彼の新しい職場が特定されないように少しフェイクを交えています。彼の了解を得ての記事のアップです。

*2:「ミクロとマクロは混ぜるな危険」p.256逆・タイムマシン経営論」楠木建・杉浦泰 日経BP 2020.10.21