〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

するどすぎる感覚や感性

床屋さんの柱には、なめし皮のベルトがぶら下げられている。お客の顔を剃るときに、床屋さんが「カミソリ」の仕上げとして使う。なめし皮の一方の端を柱などのフックに固定して、もう片方の端を左手(右利きの場合)に持ち、右手(右利きの場合)にカミソリを持つ。カミソリの背から刃 の方向に「シュ、シュ!」と両面を砥ぐものだ。

これを「革砥ぎ(かわとぎ)」という。

 

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実はこの「革砥ぎ」は、刃先をより鋭くするために「砥ぐ」のではない。砥石で砥いたカミソリは鋭すぎるので、なめし皮で砥ぐようにカミソリを往復させる。すると、鋭すぎるカミソリ刃が滑らかになり、顔を剃るときに、余計な「アタリ」をお客さんに与えないようにするためだという。

 

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鋭すぎる感覚や感性を持っていると、誰かを傷つけてしまうことがある。そして自分の指を切ってしまったりもする。いずれにせよ赤い血が流れるのだ。

 

年齢や失敗を重ねて、ぼくらの感性や感覚も鈍くなる、図太くなる。あるいはズルくなる。そして血が流れることは無くならないまでも、少なくはなる。

 

それって感覚や感性の「革砥ぎ」の結果なのかもしれない。だけど、いずれにせよ、カミソリは危ないけどな。

 

 

© 朽木鴻次郎
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