テレビドラマ「ハラスメント・ゲーム」が面白い*1。
ある回のメインエピソードにこういうものがあった。
同期の女性が部長に昇格したその下で働かなければならなくなった男性次長は、役員である常務にそそのかされる。こんなふうに。
・本当は君（男性次長）を部長に推薦していた。
・彼女は「女」を武器に社長をたぶらかして部長に昇格した。実力ではない。
・仕事でも「女」を使っている。部長の責任を果たせるとは思えない。
・彼女が問題を起こせば君（男性次長）が本来着くはずだった部長に昇進させることも考える。
そんな言葉を信じて、その男性次長は、新任の女性部長にモラルハラスメントを行い、徹底的に情報を流さないし、その部門の部下たちにも巧妙に女性部長の悪口を吹き込み離反させるのだ。もちろん「同期」の「女性」が先に昇進して、自分の上司になったことが納得できないし、嫉妬もある。
そそのかした常務は社長と対立関係にある。社長が独断推薦した女性部長が、部長の任務を全うできないこととなれば、社長を追い詰めることもできるだろうと、男性次長をそそのかしたのだ。
ドラマですからね、都合のいい展開もあるのですが、「人間の暗い部分を突き動かすようにそそのかす」というのは実に効果のある方法だ。これを巧妙に仕掛けられると、跳ね返すことが難しい場合がある。特に「そそのかす人」を部下が信用していたりする場合や、小賢しくそんな上司を利用してやろうと部下が思っている場合には。
主人公のコンプライアンス室長は、モラハラを行なっている男性次長にこう言う。
誰からとは言わないが、どうせそそのかされたんだろう。『本当は君を部長にと思っていたんだ』とかなんとか。
彼女が失脚すれば『お前を部長にしてやる』くらいのことは言われたか？ そんなことを信じて、職場の仲間を裏切ったり、かげで悪口を言ったりするのか？ 『部長にしてやる』だと？ 会社の経営陣にとっては人事なんて人の心を操るためのエサみたいなもんだ。そんな約束、約束にもなっていない言葉を信じるのか？
ドラマ後半では、主人公のコンプライアンス室長の焚付けもあって、当事者である女性部長と男性次長（同期入社という設定）が本音でやりあうのだ。その場面で、モラハラを受けていた被害者の女性部長が男性次長言ったセリフがこれまた印象的だった。
本当にあなたが圧倒的に実力があるなら、当然あたしより先に昇進してるわよ！ そうならなかったのはあんたに実力がなかったからじゃない！
言い過ぎなんじゃないの？ いくら同期でも、若い頃ならいざ知らず、ある程度キャリアを重ねてきて、お互い管理職になってる段階でこう言われちゃったら、その後の関係修復は難しいだろうな。
....何ともはや。とはいえ、ドラマですから。
もう一つ、印象的なシーンがあった。
自分を裏切って常務に昇進した同僚に、なぜ？と主人公のコンプライアンス部長が訊く。かつて同僚だった常務は平然とこう言う。
もちろん上に報告して点数を稼いで出世するためだ。組織に働く者なら皆そうだろう？
そんなことだったのか、そんなくだらないことで、俺はそんなことで左遷されていた7年間を悩み続けてきたのかと主人公は言う。
上司にきつくあたられたり、梯子を外されたりするなら、コンチクショーとファイトが湧くんだが、一緒に仕事をしてきて、仲間と思っていた同僚や部下から裏切られるとガックリくる。俺の何が悪かったんだろうって。
++++++
「そそのかす上司」、「そそのかされて裏切りを働く部下」、「居直る被害者」、「同僚や部下に裏切られたショック」、いろんな会社でいろんな人間関係を経験したし見てきたからね、よ〜く分かる。
注-1：セリフは厳密にそのものではないです。記憶に頼ってます。
注-2：「女性部長」「男性次長」という記述は他意なく、対立や区別をブログという文章表現で明確にするためですのでね。テレビの映像と文章は表現の訴求力が違うのよ。
© 旅芸人・朽木鴻次郎
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*1:テレビ東京系。主演：唐沢寿明。2018年10月〜。
