失ってしまった人。なくした思い出。間違えていた記憶。
あのものすごく暑かった夏の日。
大きなバッタがね、それも去年から生きていたような大きな茶色いバッタがその朝ぼくの部屋にいたんです。帽子でつかまえて、ベランダから放つと飛んでった。
大きな人でした。夏でもスリーピースのベストを着てはった。ネクタイは外してらしたのにな。暑いからネクタイをはずす。でもベストと上着は着る。そこがちょっとおかしかったよ。
ことし、もう一度、夏を迎えることができる。それだけで、幸せなのです。まだまだこれから。生き延びます。
去年、平成29年の7月11日、ぼくはそう書いた。
今年、住む場所や環境は大きく去年とは変わったけど、考えることは同じ。
まだまだこれから。ぼくは生き延びます。
暑くてやりきれなくても、夏は嬉しいな。いい思い出しかありません。
© 旅芸人・tavigayninh・朽木鴻次郎
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