〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

「定年バカ」

 

定年ってなんだろう。

a. 社会保険制度を背景とした

b. 老齢を理由とする

c. 合法的な雇用止め

 

本質は雇用者からの雇用止め、雇用/労働契約の解除、それが全てである。

 

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定年を迎えるに当たっての心構えを説いたりする、いわゆる「定年本」。何冊か読むと皆同じことが書いてある。先日読んだ本なんて、ご丁寧に、そのエッセンスを列挙してあった。

 

定年本のエッセンス

1・資産の現状把握と財務計画はしっかりと。

2・配偶者やご家族・友人とは仲良く。

3・健康維持にはご留意ください。

4・老父母の介護問題に直面するからね。

5・定年後の時間を持て余すと孤独地獄だぞ。

 

 

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こういうポイントを全部をまんべんなく扱っている著作もあれば、いくつかに着目して掘り下げて叙述してあるものもある。おひとりさまの男性や女性が定年を迎えることの切り口で書いてあるものもある。それぞれちょいちょいと違うが、同じでもある。当たり前か。定年本を何冊か読んで、書いてあることはだいたい同じだなってよく分かりました。随分参考になったよ。素直にそう思います。

 

よく考えても考えなくてもそうなんだけど、上に列挙した各項目は、最後の項目「定年後時間を持て余すと孤独地獄」を除いて、別に定年を迎える月給取りにだけ当てはまることではなくて、老いも若いも男も女も、自営業・自由業、アーチストにだって大事なことではある。

 

そんな定年本ですが、最近買った本は途中でやんなっちゃって全部読めなかったんです。書いてあることがあっちに行ったりこっちに行ったり、客観的な事実や数字が並んでると思ったら、著者が見かけただけの風景が極めて主観的に判断されていたりで、うんざりだ。そのあげくに、新卒から定年まで勤め上げた自分の会社の嫌な上司まで懐かしんでいたりする。

 

 

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そんなときに見かけたのがこの「定年バカ」という本でした。ネットのチラ読みで最初の方を読んで辛口のユーモア溢れる文体が面白そうだったのでキンドルにダウンロードしてあっという間に読了。著者は定年退職後約10年を過ごした方です。

 

この著者のおっしゃりたいことは:

「定年後・老後はなるようにしかならないんだから好きに生きろ」

というものでした。当然ながら、お金などの経済状況とか、健康状態とか、気力とか、これからの展望、いろんなことを総合して「どう好きに生きるか」を自分で決めていくことになると説いていて、極めて正論だと思う。

 

この本の特徴は、ほかの人の定年本をクサしてる箇所なんですね。毒舌が生き生きとしてとっても面白い。それがゆえに、ご本人の生き方について述べているところはちょっと精彩を欠く。「好きに生きるべきで、私は私の生き方をするが、それは人には勧めないよ」という著者のスタンスからそうなるんだけど。

少ないけれど何冊かの定年本はちゃんといい本ですって好評価はしている。巻末に参考書として上がっている定年本が星の数で採点されているのも楽しい。

 

だけどね、この本を「定年本」の1冊目として読むことはおススメしません。むしろ「xxxのお一人様」とか「定年男子定年女子」とか「孤舟」とか「終わった人」とか「定年後」その他の定年本を何冊か呼んだ後に、この「定年バカ」を読んでみるとすっごく面白いです。

  

「定年」って通過点なんだと思う。

 

社会保険制度が維持できなくなったおかげで、55歳、60歳、65歳と、どんどん「老齢を理由とした合法的な雇用止め年齢」が引き上げられた。挙句の果てに「百年働け」的な声も上がる中、そんな「制度」としての定年なんて、中学校や高等学校の卒業式ほどの感傷的な意味も持たないのではないかな。

もちろん、ぼくも人間だから、これから定年を迎えたり、組織人人生を終えることへの多少の不安や感傷はあるけどね。

 

++++++++++

 

この本は、今までの定年本を批判的に考えるための参考になる。一方で、そんならどうしたらいいの?ということには参考にならない。それは著者の主張が「人の意見に左右されず好きに生きろ」だからです。「生きたいように生きろ。定年本の説くことは聞くな」と説いている定年本なんですな。

 

「ここに張紙をするな」と書いてある張紙みたいだ。

 

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あのね、「ここに張紙をするな」って「看板」に書けばいいんだよヽ(´▽`)/ 

 

 

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