〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

吉野家事件について(2022年4月)その2

吉野家事件については様々な角度と側面での問題提起と意見を述べることが可能であるが、テキストベースでのコミュニケーションはとても難しいですね。

吉野家事件について(2022年4月) その1

このブログはその2として↑↑↑に続くものです。

また、朽木事務所の公式HPにもコラムを掲載した。こちらも是非ご覧いただきたいと思います。

吉野家事件から私たちは何を学ぶか〜マネジメントの自覚とコンプライアンスの実践

1. 組織のひとり「X -さん」が外部で「到底許容されない発言」をした。(事実)
2. それが社会的問題に発展し、その組織としても制裁を受けることとなった。(事実)

その場合

3. 許容されない発言類型や許容されない理由を学習する啓発活動/研修は再発を抑制する効果があるのか?→いいえ、効果はないだろう。(意見)

ということが、ぼくの問題提起です。

何が問題発言にあたるのかを学習力点にしても抑止効果はない、少ないだろう、ということです。

 

なぜなら、
4.そんな「到底許容されない発言類型」は、学習する必要もなく皆わかっている。むしろ X -さんをはじめ他の人たちは、ひごろから組織内部でそんな「到底許容されない発言類型」そのものやそれに近い発言をしていないかを不断に相互監視注意して、事前に制止抑止しなければならない。「たとえ内部でもそんなこと言っちゃダメですよ」と。

さもないと、とっても大変なことが起こる。

ところが、「事前制止抑止」はとっても難しい。特にX -さんにパワーがあると。注意することで逆に注意したこっちがケガをする、斬られる。

 

従って、啓発活動/研修をするならば、その力点は次におくことが望ましい。

5. 問題が起こる前に組織構成員、特に幹部、それぞれの人格や人間性を相互によーく観察して、指摘できる組織風土を構築すべきだ、と理解してもらい実践につなげること。そして、結果論になろうとも、事前観察や監視ができなかった場合、関係者全員にペナルティがくだされる仕組みを作り*1周知徹底し、実際にペナルティを課すことである。

 

ご参考まで。

曲突徙薪(きょくとつししん) 漢書 霍光伝より
****************
曲突徙薪無恩沢
焦頭爛額為上客耶

曲突(曲がった煙突)薪を移すは恩沢なく
焦頭爛額を上客と為すや

大意:
昔、中国でのこと。ある宿屋の煙突が曲がっていて、火の粉が飛んでいる。そこに薪が積み上げてあった。これをみつけた旅人が、危ないと思って、薪を別のところに移し始めた。宿屋の主人は、自分の薪を勝手に移している旅人を見咎めた。「何をしているんだ!」と。
旅人は、「煙突が曲がっていて火の粉が飛んでいます。薪に降りかかっているじゃないですか。危ないですよ。だから薪を別なところに移しているんです」と言ったが、主人は、余計なことはするな、とばかりに旅人を追い払ってしまった。

その晩のこと。火の粉が薪に燃え移り、火事になってしまった。そこへ通りかかった別の旅人は、必死になって、火を消すことを手伝ってくれた。髪の毛は焦げて、額(ひたい)には大やけどをおってまで、消火に手を貸してくれたのである。主人は大感激し、宴会を開き、その旅人を上客として遇した。

その宴会に集まってきた近所の人の中の一人が、ぽつりと言った。「先に薪をよそに移そうとした人のことはどうなんだろうね... 本当の上客となるべきなのは、火事になった後に、必死に働いた人なんだろうかね...?」

解説:宿屋の主人は愚かではなく、普通の人間である。普通の人間は、危機的状況に実際に陥らなければ、その重大さを理解することができない。事前に注意した旅人も、火傷を負いながらも消火に努めた旅人も、偉人であることに変わりはない。与えられた情況の中で、最善を尽くしているからである。唾棄すべきは、事後の宴会にだけ集まってきて、あの方法ではだめだ、こうしたらもっとよかったと、品評だけ下す人間である。自分自身は一切何もしないくせに、得意げにしたり顔で人をあげつらう者のなんと多いことであろうか。     

おまけ

昨日4/21 行ってきました、吉野家へ。近所といっても自転車で15分ぐらいと遠いの。お昼少し前、お客さんはフツーの入りでしたよ。『大盛り牛丼弁当10個』と多分お使いなんでしょうね、注文している女性がいました。
大盛りで10個! すごいヽ(´▽`)/
よしぎゅー、久しぶりや。おいしかったです。ごちそうさま。

がんばれ、ガンバレ吉野家、明日はホームランだ!

 

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*1:大抵は既にある。

吉野家事件について(2022年4月)その1

ちょっと古いですが(京都四条の吉野家さんで)

吉野家事件、とあるコンサルの方は「役員クラスの研修啓発活動が必要」という趣旨のことをおっしゃってるし、吉野家さんも「ちゃんと研修して啓発活動します」とおっしゃていて、それはそれでいいんだと思いますが(ぼく自身企業研修講師ですし)。

研修や啓発活動ではこの手の問題には対処し切れないのです。なぜならば
「わかってないからやってしまう」のではなくて
「わかっちゃいるけど制止できない(止められない/断ち切れない)」からなんです。

何をしていけないのか、いいのか、そんなことはちゃんと分かってるんですよ。

問題の伊東氏も「やばい」とは思っていたんですが、自己顕示欲なのか慢心なのか、自分で自分を「制止」することができなかった。

ぼくの勘ぐりですが、伊東氏はこの手のヤバめ発言は以前から社内であったんだと思います*1。吉野家さんの社風とまではいいませんが。伊東氏は同様の「ヤバめの発言や比喩表現をして注目を集める」というやり方していたと思う*2。周りの役員や部長連も「こいつもしかしたらヤベーヤツ」とは思っていたけど「制止」することができなかった。これは、伊東氏の自己顕示欲とか慢心とか、たかを括っていた、そんなことにより自分で自分を制止できなかったのとは違って、周りの役員や部長連が止められなかったその理由はというと:

「マーケティングの大物の伊東さんに事前にストップかけたら、自分の利益にならない、むしろ、自分の不利になる」と判断したんだと思います。

「わかっちゃいるけど制止できない(止められない/断ち切れない)」からだったんだと思います。

どういうことか?

・マーケティングの専門と鳴り物入りの伊東さんだ
・そんな物言いは、ノー、ダメだと言って、伊東さんに嫌われる、伊東さんを引っ張ってきた役員〇〇さんに嫌われる*3
・コンプライアンス/ジェンダー的にダメだと言っても、伊東さんとマーケティングの土俵で議論しても負けるだろう
・仮にストップかけて、実際に問題発言がされなかったとしても、それでストップかけた自分の手柄になるわけではない。
↑↑↑
こんなことで、手柄にもならないことに口出して損をするなんて、脇が甘い。

そう考えて、何も言わないんだと思います。

これは研修して、啓発活動して、どうにかなるものではない。だって「田舎から出てきた生娘に〇ブ」なんてダメに決まってるもの。分かってますよ。

じゃあ、研修啓発活動以外でどーすんの? というと。

取締役(と執行役員+部長クラス)全員にペナルティです。

取締役はもとより業務執行を監視する必要がある。みざる言わざる、の責任をとらせて、今後、みざる言わざるは、逆に自分に火の粉が降りかかるんだなと、肝に銘じてもらわないと。

執行役員や重役にはそんな法的な責任はないけど、やっぱりこれだけのことが見過ごされてきたんだ、今後第二の「生娘に〇ブ」が発生しないためにも、「言わなければいけない意見は忖度せずに言う、言わなければ自分にも責任が及ぶ」とちゃんと理解してもらうことこそが肝要と思います。会社の経営、もしくは経営に極めて近い人々なんだから、自部門以外のことも自分ごととして、「空気を読んでも忖度せずに」是々非々の発言をし続けないといけない。そんな是々非々の発言受け入れられるかどうかは、また別の話ですが*4

その2に続きます。

吉野家事件について(2022年4月)その2


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ぼく自身、牛めしは吉野家オシです*5。狂牛病で一旦牛丼の販売を停止したとき、最後の日に食べに行きました。再開したとき、また行きました。

『牛丼、なみ! ツユ抜きで! あと、ミソ汁と玉子』

1984年新入社員の頃、有楽町駅のガード下のお店、朝ご飯食べてから、口のはたに玉子の黄身をつけたままで出社したものです*6

がんばれ、吉野家!明日はホームランだ!

 

追記4/20:『取締役(と執行役員+部長クラス全員)にペナルティ』は連帯責任とは違います。取締役は業務の執行を監視する法的な責任があります。執行役員や部長クラスには法的な責任はないものの、「あいつがあんなことをするとは知らなかった」とは言えない立場の人たちであると思います。

追記4/21:問題発言(講義)があったのは4/16。4/19の報道によると伊東氏は取締役解任されたとのこと。伊東氏は吉野家ホールディングスの執行役員で、子会社株式会社吉野家の常務取締役、そんな立て付けだったのですね。吉野やホールディングスの開示文章には「本日(解任日4/18の翌日)行こう、当社と同氏との契約関係は一切ございません」って、よっぽど腹立てたんでしょうね。

追記4/21:早稲田は希望する受講生には受講料(38万円!)を返還するそうですし、吉野家は開発に10年をかけた、つまり、社命をかけた新製品の親子丼のローンチに味噌つけられるし株価は下がるし売り上げ減少も懸念される中、伊東氏に対する早稲田からの損害賠償請求、吉野家側からの法的措置の成り行きがどうなるか、というところです。

 

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*1:いやいやここまでのキャリアを気づいてきた人なんだから、普段はそんなことは口走らないはずだ、という推測もまたあり得るとは思います。

*2:でないと「生娘」なんて表現はヒョイとは出ない。

*3:怒りを買ったら自分もやられる。

*4:受け入れられるようにいろいろ画策するんですよ、大変ですけど。危険も伴いますよ。でもしなければならない。そのために、生活費の2-3年分は用意しておかないとね。

*5:ちなみに最初に食べた牛めしは「たつ屋」のものです。焼きドーフが入っていて、美味しかったなあ。1970年代の終わりから80年代半ばにかけて、日本橋室町、実家の近くにあったのよ。いまは店舗数は減ったみたい、でもたつ屋さんはちゃんと営業している、とググって知りました。今度行こう!

*6:同期の女性に「なにつけてんの!やだ〜!とか言われて嬉しかったなあ。

銀座六丁目銀巴里の先

六丁目のホテル、前泊で泊まったんです。とっても便利な部屋の建て付けなんですが......

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テレビの下にLANポートが! 配線を集めやすいんでしょうね。探しちゃったよ、LANポート。

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晩御飯は江南春(ちゃんなむちゅん)へ。

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やっぱり一人では食べきれないです。
紹興酒をコップに二杯。でほろ酔い気分。

銀巴里に行ったのはね、もう40年も前のこと。大学を卒業する年の早春だったと思う。

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泰明の近くの鳳鳴春も閉店してたんだってさ。もちろん慶楽も店を閉めたし。維新號はがんばったはるなあ。東天紅もまだまだ。ぼくがすきだったのは、神保町だけど廬山飯店。中国の親父さんがおかみさんといつも座ってたし、二階に行く階段もギシギシな感じで好きだった。スイートポーズもなくなったし。
時は飛ぶ。

旅芸人も、いつまで続けられるかな?

 

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