〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

どんなご用件でしょう? M-さんの思い出。

 

「クチキさん、明日の午後とか何か用事ありますか?」

 

面談の約束を取り付ける電話で、M-さんは用件を言う前に必ず:
「xxx日に用事(先約など)はあるか?」
と聞いてくる人だった。
ぼくも法務部だったから人から相談を受けるのが大事な業務だったりするので、アポイントメントは先約がない限りほとんど断らないことにしていた。用件次第では先約を取り消すこともあったし。

 

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でも、ぼくはいつも思ってたんです。この人はなぜ「xxxの件で話があるんです。明日の午後とか時間取れますか?」と、先に用件を言った上で、ぼくの都合を聞いてこないのだろう、と。

 

だから、時間があるかないかを答える前に「どんなご用件でしょう?」と聞くのだが、「じゃあ、明日の午後イチ、1時に伺います。実はですね....」とM-さんは話を決めてしまうのだ。

 

M-さんは、営業の仕事を長くやっている人だった。だから相手に「食いつく」ことが身体に染みついているんだろうな、ってぼくは解釈していた。そして「狡猾なアポイントメントの取り方だな。この人はズルい人なんじゃないかな」って思って、いまひとつ信用することができないでいたの。

 

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実は先日、ラジオで「英語のワンポイント」みたいな番組で*1、「今度の土日、空いてる?」とまず聞くのが日本の文化なんだ、そんな話がされていた。

相手の都合を聞いてから「実は土日にxxxがあって手伝って欲しいんだけど」とこちらの要望を続けるのが「日本語的な文化」であって、日本語を母語とする人なら違和感はない*2。しかし、そのロジックのままで英語にすると英語を母語とする文化を持つ人には「ズルい質問の仕方」だと思われることがある。

土日に時間があっても「あんたの手伝いはしたくないよ!」って事もあるんだし。

そんなことが話されていた。

 

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ちょっとびっくりポンヽ(´▽`)/ 

M-さんを「ズルい人」認定したのはちょっと行き過ぎだったかな。でもね、用件は先に言って欲しいな。自分の都合のいい時間を指定する前にさ。

 

えっと、12月24日、月曜の夜なんだけど、時間ありますか?

 

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*1:京都FM「アルファ・ステーション」の朝オビ番組「アルファ・モーニング京都」DJはサトウヒロキ氏

*2:とラジオでは言ってたけど。やっぱり用件を先に言ってからいついつの予定はどうですか、の方が誠意がある感じがするけどな。ぼくも日本語を母語としているけどな。

街のかたすみのクリスマス

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なんだ?もうマライアがプレゼントなんていらねえって嘘くせえ歌を歌う季節か。

てこたあ俺も事務所を開いて一年が経ったってこったなあ。チンケなヤマばっかりで思い出すのもバカくせえ。...え、どんな事件があったか知りてえって?よせよ、てめえの酒のさかなになるような...

そうか? わりいなそいつぁ。安い酒でもおごってもらっちゃあ口も軽くなる。
マスター! ちょっと、丸岩さん...!
この人のおごりだってさ、バーボンをダブルで。いつも通り水を少しだけ足してくれ。

 

そうだよ、持ち込まれる依頼といえば、大抵が女が逃げた、男がはたいた、貸したゼニがどうの、そんなクズ同士のお決まりばっかだが、ついこないだの話だ。ちょっと見じゃあ美人なんだが、目にケンのある、まだ三十を超えたばかりだろう、身なりもケツもいい女が、その見た目通りの冷てえ厄介ごとを持ち込んできた、ってわけさ。

 

それというのもな...

 

 

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あわただしくなってくるクリスマスから年末年始。

テレビでは歌の特別番組が放送されたり、街にはイルミネーションやライトアップ。

なんかうきうきしてくる。あまいクリスマスソング、ぼくは嫌いじゃないですよヽ(´▽`)/ 

 

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人事の嫌がらせ・会社/職場のリアル

先日、ある企業ドラマをテレビで見ていたら、その会社の人事部がある営業部長を辞めさせたいので、営業とは全然関係ない子会社に出向させ、本人のやる気を削ぎ辞めさせると言うシチュエーションが出てきた*1

 

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企業法務部の交流会でよく似た話を以前聞いた記憶がある。ちょっとフェイクも交え(記憶が曖昧なところもあるし)、ある会社の法務部長のその話をまとめてみると------

 

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「これはリーガル的にOKかどうか、YESかNOかで答えてくれ」

出勤してすぐ、朝一の電話を取ってみると人事部長がこう言ってきた。

 

どうも電話で簡単に答えられることじゃないみたいだし、下手する法務部にもとばっちりが来るから「ちょっと待ってください。いますぐそちらに行きます。会議室の準備をしていて下さい」と言って電話を切った*2

 

20代の部下一人を同行させ*3、「何も言うな、メモもとるな」と厳命して*4二人で人事に赴いたんだけど、ヒドイ話が待っていた。

 

・ある部門の課長A-さん(男性40代後半)が上司の部長(50代半ば)と仕事上の意見が違ってもめている。部長もA-さんもちょっとややこしい人ではあるようだ。

・会社(というか人事)はその課長に目をつけていたこともあり、A-さんには会社を辞めてもらいたい。しかし退職勧告をする理由もないし、退職勧告をしたら揉めるだろう。

・そこで考えた人事の作戦は次の通り。

第一段階) その部門とは全く関係のない部門にA-さんを異動させる。職位は課長のママ。

第二段階) 異動から二週間後、新しい部署で彼の部下となる課長代理のB-さん(40代前半、A-さんより7歳年下)を同格の課長に昇進させる。A-さんとB-さんの二人課長体制をとる。問題の課長A-さんのモチベーションは下がるだろう。これで辞めてくれればいいのだが。

第三段階)それでも辞めない場合、さらに三週間ほど後、新しく課長に昇進したB-さんをA-さんの上司ととなる「次長」に昇進させる。いくらA-さんでも会社を辞めるだろう、と。異動先の部門では、優秀なB-さんを元々早期に昇進させたかったらしい。

 

「これが法的にOKかどうか、YESかNOかで答えてくれ」」

 

この人事部長の本心は、法務部に保険をかける*5、つまり後でもめた時に「法務がYESと言いました」と言いたいのだろう。NOと言えば言ったでそれなりの責任もまた法務部押し付けるつもりなのだな、とすぐにわかった。

 

そもそも、そんなにYES/NOを即答できる問題ではないし、法的な問題云々よりも社会通念上倫理的な問題もあるだろうから、私としての即答は難しい。必要とあれば外部の弁護士に相談する。ただし時間と費用がかかる(ちょっとウソ)と、答えたところ...

 

「もういい! 外部弁護士に聞くなら、人事部が懇意の事務所に問い合わせる!*6

 

と、言い放たれた*7

 

「わかりました。本件、法務としての関与は必要ないということですね。しかし、あまり陰湿な嫌がらせで自主退社に持ち込もうとするのは如何なものかと...」

 

会議室のドアを開け退出する直前に、こう言い置いて、サッと立ち去った*8

 

会議後、私は同行させた部下を自室によび「1-人事部長の発言(作戦?)内容、2-人事部長が法務を介さず知り合いの弁護士に直接相談すると決めたこと、3-法務部長(私)は『社会通念上倫理的な問題がある』とコメントしたこと」この3点だけ簡潔にメモして*9、メールで私(法務部長)、ccで君の上司の法務課長*10を入れて送信しろと指示を出した。記録に残すためです。

 

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その後どうなったんですか?

 

その後? やっぱり弁護士さんだって責任取りたくないじゃないですか。あんまりえげつない仕打ちだもの。A-さんの異動は結局はなかったみたいですよ。

 

よかったねヽ(´▽`)/ 

 

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*1:テレビ東京系「コンプライアンス・ゲーム」唐沢寿明、広瀬アリス主演、2018年。

*2:ややこしそうな話のとき、電話でさらりと(聞かなくていいことは聞かないで)済ませるか、面談した方がいいのかケースバイケースの直感判断が必要ですね。

*3:後々の証拠ともなるから、同行者をつける。

*4:いらないことまでメモされても困る。この辺はうまいこと部下をしつけておくこと。もちろん「いらないことまでメモされても困る」などと説明してはいけないのよ。

*5:組織に長く居れば、この手の知恵は大抵備わってくる。こっちが一枚上手を行くためにどうするかを考えるのが大事。

*6:本来、外部の法律専門家-弁護士、弁理士や司法書士-との窓口として一括で法務部が対応するのだが、この人事部長は「我が強い」タイプの人だったようですね。

*7:相手がキレたらそれはチャンス。

*8:自分の言いたいことを言う。それは相手に伝えるためではない。「これこれと発言した」と記録に留めるためです。立ち去り間際に言えば、相手のコメントも封じることができる。

*9:メモは書き残したいことを書く。

*10:情報をどこまで共有するかは、ケースバイケースで判断です。