〜 ハリセンボンのおびれ 〜

生活と愉しみ そして回想・朽木鴻次郎

生命と夏の始まり

年をとると時間の経過が早くなるというが、そうでもないこともある。

二年前、三年前のことが大昔のことのようだ。

 

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5月から7月、生命の力が最高潮に達する時期。

全てが力強く、生命を感じる季節、夏の始まり。

ただし、失われていくもの、存在しなくなったものもある。

ほんの一瞬でもおもい出したい。もしぼくがいなくなったら、残った人たちにはほんのちょっとでもいいからおもい出してもらいたいとぼくは思う。

 

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......夏にはいい思い出しかありません。

みーん、みん、みん、みーん。

子供の頃、せみの鳴き声なんて、聞いたことがありませんでした。それがぼくが生まれてそだった都会です。

関西では、せみは、じー、じー、じー、しゅわ・しゅわ・しゅわ。今朝、御池通りに、この夏初めてせみが鳴きはじめました。

ことし、もう一度、夏を迎えることができる。それだけで、幸せなのです。
 
まだまだこれから。生き延びます。

 

 

 

© 旅芸人・tavigayninh・朽木鴻次郎

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